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京都地方裁判所 昭和61年(ワ)970号 決定

原告

浅沼博

右訴訟代理人弁護士

海藤寿夫

被告

株式会社オリエントファイナンス

右代表者代表取締役

鈴本幸四郎

右訴訟代理人弁護士

今中浩司

阪本政敬

被告

国内信販株式会社

右代表者代表取締役

佐々木典綱

右訴訟代理人弁護士

田中実

主文

本件訴訟事件を福岡簡易裁判所に移送する。

理由

本件訴訟事件の原告の被告らに対する各請求は別紙の請求の趣旨一、二記載のとおりであつて、右各請求において確認を求められている各債務の義務履行地が福岡市であることはその趣旨から明らかである(この点は、原告も認めている。)ところ、右各請求は、分離前の共同被告の草場芳里に対する請求と併合提起されていたものである。ところで、右草場に対する請求のうち、不法行為に基づく損害金一〇万円の支払いを求める部分については、その義務履行地は民法四八四条後段に基づき原告の現住所地(京都府八幡市)であるから、民訴法五条、二一条に基づき、結局、原告の右草場に対する請求全部につき当裁判所は管轄を有するものである。しかし、原告の被告らに対する前記各請求が右草場に対する請求と併合提起されたことによつて、原告の被告らに対する前記各請求についても当裁判所に管轄が生ずると解することは以下の理由により認め難い。すなわち、民訴法二一条は、数人の被告に対する訴の主観的併合のうち、各被告に対する請求の間に実質的な関連性がある場合、すなわち、訴訟の目的たる権利義務が数人につき共通である場合や、同一の事実上及び法律上の原因に基づく場合(民訴法五九条前段)にのみ適用されるものと解するを相当とする。思うに、共同被告に対する各請求間にほとんど実質的な関連性のない場合にまで同法二一条の規定による関連管轄の成立を認めるのでは、原告の立場の偏重にすぎて、被告の利益を害することが甚しいとの非難を免れず、相当でないからである。そこで、右の見地により本件を見るに、本件訴訟事件における原告の主張事実によれば、原告の前記草場に対する請求と、原告の被告らに対する前記各請求との間には、右に説示の関連管轄が成立すべき関連性を認め難いので、原告の被告らに対する前記各請求につき当裁判所に右関連管轄は生じないものである。しかして、原告の被告らに対する前記各請求の義務履行地、又は被告らの普通裁判籍(民訴法四条所定)が、当裁判所の管轄区域内にないことは明らかであり、他に、右各請求につき当裁判所の管轄が成立すべき事由は認められない。そうすると、原告の被告らに対する前記各請求の訴えについては当裁判所は管轄を有しなく、右訴えについては、民訴法五条、裁判所法三三条一項一号に基づき、福岡簡易裁判所が管轄を有するものである。よつて、民訴法三〇条一項に基づき、主文のとおり決定する。

(裁判官山﨑末記)

請求の趣旨

一 原告と被告株式会社オリエントファイナンスとの間に、昭和六〇年一二月頃に成立したクレジット契約に関して、原告を債務者とする金三七万五、〇〇〇円の支払債務の存在しないことを確認する。

二 原告と被告国内信販株式会社との間に、昭和六〇年一二月頃に成立したクレジット契約(販売店ファミリィライフジャパン)に関して、原告を債務者とする金四五万五、〇〇〇円の支払債務の存在しないことを確認する。

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